炭素繊維は空を飛ぶ B787の50%は複合材で出来ている

ブログタイトルに”炭素繊維は空を飛ぶ”というワードを入れているのは、ボーイング社製 B787に炭素繊維複合材という先端材料が非常に多く使われていることに由来しています。特に胴体や主翼はほとんど複合材で出来ており、これまでの飛行機とは一線を画す設計になっています(従来はアルミニウム合金などの金属材料が使われていたが、B787では機体全体で複合材が50%程度使用されている。)。B787に使われている複合材は日本のメーカーが供給に大きな役目を果たしています。

 

 

炭素繊維複合材は炭素繊維強化プラスチックやCFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics)などと呼ばれる材料で、強化材に炭素繊維を用いた繊維強化材料です。

繊維強化材料って何か、ほとんど聞いたことにない言葉ですが、実はガラス繊維を使った繊維強化材は浴槽などに利用されています。他にも住宅用の建材にも使用されていたりと、身の回りに気づかぬうちに使われている材料だったりします。

 

繊維強化複合材は繊維で樹脂などの材料を強化する(一般的に強化される側の材を母材と呼びます)、という意味合いです。

浴槽を例にとると、強化材はガラス繊維、母材は不飽和ポリエステルと呼ばる樹脂(プラスチック)という組み合わせです。

(人工大理石系の浴槽はアクリル系の樹脂です。)

浴槽を見ても繊維が入っているように見えますが、これは表面が塗装されているためです。

 

そして炭素繊維を強化材として使用したものが炭素繊維複合材になります。

なぜ、B787に炭素繊維というものが使用されたか、という理由ですが、炭素繊維は軽くて非常に強い材料だからです。

重量当たりの強度は鉄の10倍、硬さ(剛性ともいう)は7倍と非常に軽量で強い材料であることが分かります。

(強度は壊れにくさ、硬さは変形のしづらさ、という意味です。)

他に金属材料と異なる点として、錆びない、疲労しない、という特徴があります。

 

wikipediaの記事を参考にリンクとして載せておきます。

炭素繊維 Wikipedia

 

 

B787には、エポキシ樹脂と呼ばれる材料を炭素繊維で強化した炭素繊維複合材が使用されているそうです。日本の炭素繊維メーカーである東レはB787に使用されている炭素繊維を製造し、さらにプリプレグと呼ばれる炭素繊維にエポキシ樹脂を浸み込ませたシートも製造し、ボーイング社に供給しています。

 

この炭素繊維とエポキシ樹脂を組み合わせたプリプレグのシートを何枚も積層していき、オートクレーブと呼ばれる窯で加圧しながら加熱することでエポキシ樹脂を硬化させて、主翼や胴体などの部材(炭素繊維複合材)を作ります(一般的に成型と呼ばれる工程)。この成型の工程を川崎重工業、富士重工業、三菱重工業が行っており、炭素繊維複合材に関する工程で多くの日本のメーカーが関わっています。

 

 

この炭素繊維複合材を使用したことでB787では様々な恩恵が得られています。

 

一つは、軽量で強さに優れる複合材を使用することで燃費の向上が実現しています。

これに関してはジェットエンジンの改良による部分もあるのですが、燃費は20%程良くなったと言われています。飛行機は燃料を非常に多く消費するため、燃費改善はコスト面でも地球環境からの面でも非常に重要です。また、燃費が良くなるということは同じ燃料の量を積んだ際に遠くまで飛べる(航続距離が長い)ため、遠隔地への直行便が飛ばせるメリットがあります。

 

二つ目は機内湿度の向上です。

従来では金属材料が使われていたため、金属の腐食を抑えるために機内の湿度を数%にまで下げていました。しかし、炭素繊維複合材を使用したことで腐食の心配がなくなり、機内湿度を20%程度まで上げることができるようになり、機内の環境が改善しました。

 

三つめは胴体の硬さ(剛性)が向上したことで与圧アップと窓枠が大きくとれるようになったことです。機内の与圧を上げることで、地上との気圧差が小さくなり、耳が痛くなったりといったフライトでの不快感を低減できます。また、窓枠を大きく取れることでフライト中の眺望が良くなり、さらに窓側だけでなく通路側からからも外の様子が見やすくなります。

 

 

B787では日本の技術である炭素繊維複合材が積極的に使用されており、これによって客室環境の向上や燃費の向上につながっているのは嬉しい限りです。残念ながら、私はまだB787に搭乗したことがないため一度は乗ってみたい機体です。皆さんもB787に乗る際は日本の技術が使用されている胴体や主翼の違いを見ながら、搭乗されてみてはいかがでしょうか。

以上、炭素繊維複合材とB787の紹介でした。

 

 

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